NPOのロゴ、88個を紹介して見えてきたこととは 〜デザイナー林田全弘さん〜

最終更新日:2019年8月10日

ロゴストックのデザイナーインタビューLOGO DAYS。
今回は、NPOをデザイン支援を行っている林田全弘さんです。

林田さんは、2007年からNPOのデザイン支援を開始。これまでNPOや中間支援組織、地域団体のパンフレットやロゴ、チラシなど、延べ20団体50以上の広報物を手がけてきた、デザインに悩むNPOにとっての縁の下の力持ち的な存在なのです。

ロゴストックでは、88コのNPOロゴを紹介する企画を立ち上げ、毎週1つずつ丁寧に紹介してくださいました。

そんなNPOロゴ紹介も先日ついに目標としていた88個目を迎え、めでたく達成。
「たくさんのNPOロゴから見えてきたこと」「NPOにとってロゴとは?」「NPOのデザインの課題は?」などなどをお聞きしました。

ーお疲れ様でした。2014年5月7日からスタートし、1年9ヵ月ほどで88コ達成です。まず、今の率直な感想は?

ありがとうございます。おかげさまでここまで来れました。あっという間でしたね。

途中、ネタ切れの危機もありましたが、ロゴの探し方を変えたり、ネタをご提供いただいたり、なんとか乗り切ることができました。
気づけば、まだまだご紹介したいロゴがいくつもある状況です。

ーあらためてお聞きしますが、なぜNPOのロゴを集めようと思ったのでしょうか?

これまで10年近くNPOの広報物をデザインしてきました。その中で感じたのが、NPOにとって最も重要なデザインは、やっぱりロゴなんじゃないかということです。

「CIの活用は、最小の費用投下で、最大の効果がもたらされる」という言葉があるように、時間もお金もないNPOが魅力的なロゴをつくることによって多くの恩恵を得ることができます。
例えば、広報物のデザイン方向性で迷う時間ロスを軽減させたり、メンバーの一致団結を促したり、いいことづくめなんです。
なので、NPOのデザイン活用を進めていく上で、起点となるロゴに力を入れていきたいなと思うようになりました。

まずはNPOロゴを集めよう、と。魅力的なNPOロゴを一同に集めることによって、デザイナーにはインスピレーションを、ロゴをつくりたい人にはそのヒントをそれぞれ提供していきたいと思いました。
そのことでNPOロゴ全体のクオリティアップに少しでも貢献できればと思ったのが、そもそもの初心ですね。

ー88コのロゴを紹介してきた中で、特に印象に残っていることは?

あるNPOから「うちのロゴも掲載してほしい」とお申し出をいただいたことですね。嬉しかったですし、びっくりもしました。

そのNPOは企業や行政との協働を進めているところで、さすが巻き込み力というか、情報発信に対する貪欲さが違うな、と感じました。
掲載してほしいと思えるくらい、自分たちのロゴを誇りに思えるって大事ですよね。

ーNPOならではのロゴの特徴ってどんなところでしょう?

エッジが効いているスマートなテイストよりも、親しみやすさを感じさせるものが多いように感じます。

買ってもらってなんぼの企業と違って、多くのNPOは共感してもらってなんぼの世界です。
内閣府の調査によると、ボランティア活動に関心のある市民が約60%に対して、実際に活動した人は約20%弱という数字があります。
その約40%の壁をどう崩すのか、親しみやすく参加しやすいような表現に取り組むNPO側の努力のようなものが、ロゴから滲み出ている気がします。

あとは話題性です。
ロゴを通じてコミュニケーションを生み出したり、扱う社会的課題の理解を促す工夫は、NPOならではと思います。

例えば、丹波漆さんのロゴ。この逆三角形のラインは、漆を採取する際に樹木につける傷なんですね。
この「漆掻き」ができる職人さんが減って、伝統が失われつつある。そんなストーリーをロゴから説明できてしまうんです。

あとは所在地が記されている京都市東山いきいき市民活動センターさんのロゴ、顔が描き込めてしまうcobonさんのロゴも、会話が生まれるデザインですね。

ーロゴに限らず、NPOがかかえるデザイン的な課題はありますか?

とにかくデザインの担い手が足りません。

デザインソフトやインターネットのおかげで、NPOスタッフでもそれなりのデザインができる時代になりましたが、それでもプロのクオリティには及びません。
NPOは、ボランティアという関わり方しかないのでは、と思われがちですけれども、なかには予算がそれなりにあるNPOもいらっしゃいます。市場としてある程度成り立っているものの、供給が追いついていない状況です。

難解でマイナーな社会的課題をわかりやすく伝えたり、感動とともに賛同者を増やしたり、お金も時間もないなかで効果的なデザインをつくったり、そんなデザインチャレンジがごろごろ転がっているのがNPO業界です。
志のあるデザイナーさんには、ぜひこの分野に挑戦してもらいたいです。

ー林田さんの今後について聞かせてください。

NPO業界における数少ないデザインの担い手として出来ることは何か、常に模索しています。
やはりロゴについてはこれからも取り組んでいきたいと思います。88という当初のゴールは達成しましたが、ぜひ今後も連載を続けさせていただきたいです(笑)。

あとはアドバイザーとして、いろんなNPOの相談に乗っていきたいと思います。
例えば、デザイナーさんから提案されたロゴが、最適なデザインかどうか、目利き役としてアドバイスをさせていただいたり。

そんな感じで、デザインを活用したいNPOさんからのご相談をお待ちしています。NPOの向けデザイン全般のノウハウをまとめるブログを立ち上げていますので、もしよければそこからお気軽にご相談いただきたいですね。

最後に(ロゴストックより)

インタビューの中で「NPOにとって最も重要なデザインはロゴ」とありました。
ロゴをつくるのは、依頼をする側も制作をする側も思っている以上に大変だったりします。でも、ロゴは「顔」であると例えられるように、関わる人々に向けて一番印象に残るもの。だからこそ腰を据えてしっかりと作ることが大事なんですね。そんなことを改めて感じました。

そして、NPOロゴの紹介は、88というゴールを迎えましたが、これからも継続していくこととなりました! ^^
どうぞ楽しみにしてください。

関連リンク

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