コーポレートカラーの決め方のコツ。色の心理的イメージと実例から考えよう

最終更新日:2020年7月11日

新しい会社やブランドを立ち上げたとき、ロゴの色はどのように決めているでしょうか?

普段、企業のロゴづくりのお手伝いをしていると、「ブランディングをじっくり考えれば考えるほど、色を決めるのが難しい」と言われる方が多いように感じます。

コーポレートカラーは、会社の印象を大きく左右するもの。
色が持つイメージや、色から与えたい印象をしっかりと考え、戦略的に色を決めることは、強いブランドを構築するためにとても重要です。

今回は、コーポレートカラーの決め方のポイントと、各色の心理的イメージや実例を紹介します。
企業ロゴの色を決める際の参考にしていただければ幸いです。

コーポーレートカラーとは? なぜ重要?

コーポレートカラーとは、企業や団体、組織を象徴する色のことです。シンボルカラーという言い方をする場合もあります。

コーポレートカラーを定めて、それをロゴマークや看板、製品、パッケージ、WEBサイトなどで統一して継続的に使用していくことで、人々の印象に深く刻み込まれるようになります。

例えば、スターバックスは何色?と聞かれたら、ロゴの緑色がすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。
青いコンビニと言えば?と聞かれたらローソンがぱっと浮かびます。
強いブランドは、企業・ブランドと色が、紐付いて人々に記憶されています。

また、各色には人の心に働きかけるそれぞれのイメージがあります。
色から感じるイメージが、その企業のイメージを決めていることも。
企業理念やビジョンとうまくリンクしている色をコーポレートカラーに選ぶことで、企業イメージや方向性を人々に示し伝えることができるのです。

コーポレートカラーの決め方

コーポレートカラーは、どのように決めていけばいいのでしょうか?
考え方のヒントとなるポイント5つをあげてみます。

1.与えたいイメージから考える

一般的に赤は、エネルギッシュ、青は知的、クール、緑は若さやナチュラルなど、人の心理に働きかけるイメージを持っています。
自社はどんな企業に見られたいか、自分たちの社風はどんなものかなどを考えて言葉にしてみましょう。
その言葉のイメージに近い色からコーポレートカラーを選んでいきます。

2.競合との差別化を考える

同業や競合にあたる企業の色をチェックし、なるべく同じ色にならないようにすると良いでしょう。

例えば銀行を考えてみると、メガバンクと呼ばれる3行は、みずほ銀行が「青」、三菱UFJ銀行は「赤」、三井住友銀行が「緑」とキレイにわかれています。
色を見ただけで、どの銀行であるかの区別がつきます。

ただし、与えたいイメージや社風など、自社のらしさを考えると、どうしても競合と同じ色にしたいということもあるかも知れません。
その場合は、トーンを変えるなどして、なるべく同じイメージにならないような工夫をすることをおすすめします。

3.業種や領域、ネーミングなどを連想させる色から考える

業種や領域を連想させる色というのは、例えば、空や海に関連するなら「青」、環境・エコなら「緑」、日本的なものを扱っている企業なら「赤」といった選び方です。
そのものの色であったり、すでに世間一般的に認知されている色をコーポレートカラーに選ぶことで、どんな企業なのかを容易に伝えることができます。

また、社名・ネーミングをイメージさせる色をつかうことも考えられます。
例えば、社名に光が使われていたら「黄」、トマトなら「赤」などです。
色からの連想効果もあり、社名を覚えてもらいやすくなるでしょう。

4.好きな色から考える

与えたいイメージや、同業との差別化を考えて論理的に色を選んだとしても、どうもその色では、気分が乗らないということはあるものです。

会社設立時であれば、創業者の好きな色やラッキーカラーをコーポレートカラーにすることで、想いを表現することもできるでしょう。

ただし念の為、選んだ色が一般的にどんなイメージを与えるのかは確認しておきましょう。

5.あえて定めないという選択も

扱う分野が幅広い企業や多様性などを重視する企業は、コーポレートカラーを定めない、または黒やグレーの無彩色にするのも一つの手です。

最近は、社員それぞれの個性を表現するために、名刺のロゴの色を社員自身が選べるようにしている会社も見られます。
コーポレートカラーとして一つに定めるのではなく、色で「多様さ」を表現することができます。

コーポレートカラーの実例、色のイメージ

ここからは各色のイメージを紹介します。コーポレートカラー選びの参考にしてみてください。


青は、空や海を連想させる爽やかなイメージと、誠実さや知的な雰囲気があります。
世界でみたときにロゴに使われる色としていちばん多いのが、青と言われています。
青はもっとも人気のある色であり、すなわち青を嫌う人が少ないというのも理由の一つかもしれません。

青のイメージワード

クール、知的、先進的、仕事、情報、論理的、真面目、信頼、スピード、冷静沈着、爽やか、水、空、地球

青がよく使われる分野

IT、精密機械、教育、ビジネス系、スポーツ、飲料系、水や空などに関わるもの

青のコーポレートカラー事例

みずほフィナンシャルグループ

青が基調となっており、コズミックブルーという名前がついています。
信頼、誠実、ワールドスケール、クオリティが表現されているそうです。
また、サブカラーの赤はホライズンレッドと名付けられ、お客さまとのリレーションシップ、ヒューマニティ、情熱が表されています。
[出典: https://www.mizuho-fg.co.jp/company/policy/brand/b_logo.html

ANA

青の濃淡でコーポレートカラーが構成されていて、濃い青は「トリトンブルー」、 薄い青は「モヒカンブルー」 と命名されています。
トリトンブルーはギリシャ神話の神「トリ―トーン」に由来され、海と空の違いはありますが、「旅の安全」を願う気持ちが込められているそうです。
また、モヒカンブルーは以前の機体外装デザイン「モヒカンジェット」のカラーが由来となっています。
[出典: https://www.anahd.co.jp/group/recruit/ana-recruit/about/brand.html


赤は、人の目に留まりやすく、活力や情熱、強いエネルギーを感じさせます。
日本ではロゴに使われる色としていちばん多いとされています。
赤は日の丸や鳥居など、日本的なものを象徴する色とされていることが理由の一つでしょう。

赤のイメージワード

情熱、活力、エネルギッシュ、あたたかみ、食欲をそそる、明るい、目立つ、血液、炎、日本的

赤がよく使われる分野

食品系、飲食系、日本的な分野、エネルギー系

赤のコーポレートカラー事例

三菱UFJフィナンシャル・グループ

コーポレートカラーは「MUFG Red」と名付けられた赤です。
MUFG Redは、常に最高レベルのサービスを追求し、これからの金融サービスをダイナミックに変えていく活力と、お客さまとの結びつきを大切に、お客さま一人ひとりに向き合っていく情熱が表現されています。
また、ロゴタイプに用いられている「MUFG Grey」は、真に頼りがいのある総合金融グループとしての信頼感が表されています。
[出典: https://www.mufg.jp/profile/philosophy/

NTTドコモ

変革する企業スタンスを強く打ち出すために、ダイナミックさや躍動感を感じさせる赤をコーポレートカラーとしています。
また、「ドコモレッド」という名前がつけられています。
[出典: https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/about/outline/identity/index.html


緑は、中性色で寒暖のイメージがつきにくいため、幅広い業種、分野で使われます。
青や赤と比べるとインパクトにややかけますが、信頼感や安心感を与える色です。
また、近年は環境重視やエコなイメージから緑を選ぶケースが増えてきています。

緑のイメージワード

ナチュラル、自然、エコ、新鮮さ、リラックスさせる、癒やし、信頼・安心、成長、生命力

緑がよく使われる分野

環境系、自然系、農業、野菜、生活系、若者支援、癒やし系

緑のコーポレートカラー事例

日本財団

ロゴカラーであるグリーンは「親しみ」「共感」「希望」「平和」を表しているそうです。
[出典: https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/who_dis_ci_09.pdf

オレンジ


オレンジは、喜び、親しみ、明るさといったポジティブな印象を与える色です。
赤の情熱的なイメージと黄の明るいイメージを合わせ持った元気な印象もあり生活系やエンタメ系でよく見かけます。

オレンジのイメージワード

親しみ、快活、フレンドリー、あたたかい、家庭的、陽気、元気、挑戦、にぎやか、カジュアル、みかんなどの果物

オレンジがよく使われる分野

生活系、エンタメ系、活動的な印象の企業など

オレンジのコーポレートカラー事例

キッコーマン

オレンジ色がブランドカラーになっています。
太陽や炎、大地や豊穣を感じさせ、「健康・若々しさ・活力」を象徴するとともに、食欲を増進させる色とのことです。
[出典: https://www.kikkoman.com/jp/corporate/brand/brand.html


黄色は、有彩色の中でいちばん明るく、光をイメージさせるカラーです。
白の背景では視認性が低下する場合があるので、コーポレートカラーで使う場合は、しっかりと検証しながら色味を決めるとよいでしょう。黒と組み合わせて使うなどの工夫がされているケースも多いです。

また、黄に近い色とも言えるゴールドは、高級、特別感、堂々とした印象を感じさせます。

黄のイメージワード

明るい、快活、注目・注意、希望、ユーモア、フレンドリー、光、ひらめき

黄がよく使われる分野

クリエイティブ系、個性的な企業、光に関連する企業

黄のコーポレートカラー事例

ニコン

ロゴのカラーは黄色になっています。
未知の可能性を「連続した光」によって表現したグラフィックエレメントに、黄色は「広がり」「情熱」、ブラックは「信頼性」「高品質」をそれぞれ表しているそうです。
[出典: https://www.nikon.co.jp/corporate/brand/brand_symbol/index.htm

ピンク


ピンクは、赤に白を混ぜた優しい色です。
赤にある刺激的で情熱的な印象がやわらぎ、優美で女性的な印象になるため、女性ターゲットの企業で使われることが多いです。

ピンクのイメージワード

女性的、かわいい、やさしい、華やか、愛情、エレガント、甘い、まろやか、幸福感、さくら

ピンクがよく使われる分野

女性的な製品や企業、お菓子、子ども向け

ピンクのコーポレートカラー事例

ダイソー

[出典: https://www.daiso-sangyo.co.jp/

ダイソーのカラーは、ピンクのなかでもひときわビビッドであるマゼンタのような色合いです。鮮やかでポップな印象になっています。


紫は赤と青が混ざりあった中間色で、感性を刺激しインスピレーションを与える色です。
また、日本でも西洋でも古くから高貴な色とされており、淡い紫にはフェミニンな印象も感じさせます。

紫のイメージワード

高貴、神秘的、エレガント、気品、美しい、高級感、感性、芸術的

紫がよく使われる分野

女性向けのファッションや化粧品など、音楽や教育系

紫のコーポレートカラー事例

ヤマハ

ヤマハのロゴの色は、バイオレットになっています。
紫は国内外問わず古来より高貴な色とされ、優雅さや気品あるイメージから、楽器や音楽に携わるヤマハの事業に合致するとして、1950年代前半ごろに規定されたようだとのことです。
[出典: https://www.bcnretail.com/market/detail/20170630_43056.html

グレー ・ シルバー


グレーは白と黒の中間にある色で、落ち着いた雰囲気は、どんな色との配色もシックにまとまります。
グレーはスーツの色というイメージもあり、ビジネス的な印象を感じさせます。
また、グレーはシルバーにも近いため、コーポレートカラーとしてはシルバーの名称をつけるケースも見られます。

グレー系のイメージワード

上品、落ち着き、スタイリッシュ、知的、大人っぽい、都会的

グレーがよく使われる分野

コンサル系など知的かつ落ち着きや信頼を与えたいもの、自動車、時計など

グレー・シルバーのコーポレートカラー事例

ソフトバンク

ソフトバンクのブランドカラーはシルバーです。
シルバーは、他の色に影響されず、その色自体で輝くイメージとして採用されたそうです。
マークは、シルバーと2本ラインを組み合わせることで、情報革命の象徴として、時代を経ても色あせることのない旗印となっています。
[出典: https://group.softbank/philosophy/identity


黒は、イメージとしては暗黒、夜などのマイナスイメージがある一方で、神秘的な雰囲気も感じさせる色です。
フォーマルでモダン、落ち着きなどを感じさせます。
また、特定のイメージがつかないという特徴を活かし、ファッション系など華やかな分野ではあえてロゴは黒というケースもよくみられます。

黒のイメージワード

モダン、特定のイメージがつかない、落ち着き、力強さ、シンプル、大人

黒がよく使われる分野

ファッション系、デザイン重視のもの(あえてロゴに色をつけない)、高級感のあるもの

黒のコーポレートカラー事例

スターフライヤー

スターフライヤーは黒い機体が印象的で、とてもスタイリッシュです。
MODERNというイメージの方向性からこの黒い機体に至ったそうです。
[出典: https://www.starflyer.jp/starflyer/corporate/concept.html

さいごに

多くの会社は、自社のコーポレートカラーに「コズミックブルー」や「ドコモレッド」など、独自の名前をつけています。
自社を表現するために戦略的に決めた色は、その色自体に特別な想いや意味が込められているものです。
名前をつけることで、その色を大切にしていることが内外に伝わりますし、コミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。
ブランドを長く育て、深く浸透させていくためにも、コーポレートカラーを決めたら、ぜひ名前をつけて運用していきたいですね。

以上、コーポレートカラーの役割、決め方のヒント、それぞれの色のイメージと事例をご紹介してきました。
これから会社を設立したり、ブランドを立ち上げようと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
 
 
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