人をアトオシするブランドをデザイン 永井弘人さん 〜LOGO DAYS ロゴデザイナーインタビュー

最終更新日:2022年2月9日

永井弘人さんロゴストックのデザイナーインタビュー【LOGO DAYS】。
今回登場するのはアトオシという屋号で活躍しているグラフィックデザイナー、永井弘人さんです。

「ロゴマークを軸にした展開」。それが永井さんの活動分野。
企業や店舗、個人まで、幅広い分野のブランディングを手がけていらっしゃいます。

「デザインとは、目的を形にすること」。そう語る永井さんのロゴデザインのアプローチを伺いました。

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コンセプトが重要

アトオシに依頼をしてくるクライアントは、自分が経営する会社であったり、生み出した商品やサービス、はたまた自分自身に対して「ブランド」を取り入れようとする人たちです。

彼らには、理念があり、哲学があり、目指すものがある。その思いにはブレがなく、とても切実で、ある種の迫力があるといいます。

まずはしっかりとしたヒアリングから入ります。大事なことは3つ。
その対象に込めた想い、目的、第三者にどのように感じて欲しいのか? これらをすべて語ってもらうのです。
経営者に近い立場の人たちの話が聴けることは、とてもエキサイティング。それもこの仕事の面白さのひとつのようです。

ヒアリング内容をもとに、はじめに行うことは、コンセプトメイキング。
一言で言うと何なのか」。シンプルな短い言葉に凝縮させていきます。

最初は発散させるステップです。それに似合った言葉、連想される言葉、つながっていく言葉など、思いつくワードを色々と出し、手を止めることなく紙に書き留めていきます。

一通り出し尽くしたら、今度はそれをじっくりと眺めます。
すると、そこから光る単語が現れてくるといいます。2つか3つの言葉を組み合わせてコンセプトにすることが多いそうです。

コンセプトは、書き出している間にも「こんな印象、こんな雰囲気ではないか?」と見えてくることがあり、この作業を通して、再確認したり、くっきりさせることでもあると言います。

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オリジナルプリザーブドフラワーをつくる「ri Lavande」のロゴデザインでは、「心地よい空間」というコンセプトとしました。
花そのものよりも、それがある空間をイメージする。それがこのブランドにおける核の部分であると位置付けました。

そこから形に落としこんでいき、クライアントへの提案もコンセプトとともに行う。
ロゴマークだけでなく、名刺やタグ、ラベルなど様々なツールへの展開も同時に行っていきます。
ブランドを具現化したものがロゴ。そしてそこから展開されるツール。
コアとなるコンセプトがあれば、デザインもブレることなく、様々に広げていくことが出来るのです。

身体に通す

コンセプトから形に落としこんでいくステップはどのようなものなのでしょう。
永井さんのデザインアプローチはとても丁寧です。

コンセプトが完成したからといって、いきなりマークやタイプのデザインに入るわけではありません。
まずは入念なリサーチ。コンセプトワードをフィルターにして、そのイメージに近いビジュアルや、既存の店舗、場所、空間などを収集していきます。

その収集過程では、もちろん既存のロゴも対象になっています。
例えば、「力強さ」という言葉をフィルターにした場合、集めたロゴを見て、そのどの部分がカジュアルさを醸成しているのかというのを探しだしていきます。実際にそれを模写してみることもあると言います。
自分で手を動かして模写してみることで、力強さの表現というものが身体を通して確認でき、自分のものになっていくのです。

例えば、金舌という肉割烹のリブランディングでは、「力強くカジュアルに」というコンセプトをたてました。
力強いと感じるロゴ、カジュアルな印象のあるロゴについて、有名ブランドのロゴから、知る人ぞ知るロゴまで、いくつもピックアップをして、それを模写したシートを見せていただきました。(ここでご紹介できないのが残念ですが・・・)

コンセプトワードを的確に形に落としこむには、このような入念な準備作業が重要なのです。

それから、実際のデザインワークに入ります。
様々なデザインパターンをつくっては、一つひとつ検証していく。
そのカタチが、コンセプトに合っているのか、丁寧に確かめながら形をつくっていくのです。

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いい塩梅のいい加減を目指す

一見、システマチックなデザインアプローチがある印象ですが、ご自身のコンセプトは、「人とのつながりをデザインする」「日常をくだらなさで魅せる」ことだそう。
この2点をいったりきたり、時には混ざり合い、デザイナーとしての永井さんが成り立っているのです。

「しっかりとしたデザインを提供することを念頭に、人間くさく、だっさいところも丸出しにして、デザインと日常に対する間口をこじ開けている最中」とのこと。
目指すは、いい塩梅のいい加減なのです。

そんな永井さんがつくってくれた上部のLOGO DAYSのロゴは、
「日常をくだらなさで魅せる」というコンセプトのもとにデザインされました。

デザインを学ぶ方々へ

永井弘人さん永井さんは、都内の専門学校で講師もされています。
そこで、教壇に立つ経験から、デザインを学ぶ方々に向けて、語っていただきました。

イラストレーターで、きれいにレイアウトが組める、フォトショップで、思い通りのビジュアルが作れる。デザイナーを目指すうえで、これらはもちろん必要なことです。

しかし、そういったツールの技術レベルの向上を意識するよりも、自分自身が人のためにデザインを行っているか、本当に貢献できているか、真面目に、いい加減に、具体的に考え、動くことのほうが大切だと考えます。

その想いを根底にしていれば、自ずとより良いデザインを共に生み出したい、
という欲求が湧いてきて、スキルもグイグイと伸びるのではないでしょうか。

そのデザインは、誰のためのものか?

架空のクライアントを設定してたくさん取り組んでみることもいいですが、まずは、家族や友人、身近な環境で全然良いので、リアルな人に向けた、人のためのデザインをつくることで何か見えてくるものがあるはずです。

デザインは人と人をつなぐもの、誰かのアトオシをするもの。永井さんのそんな想いが伝わってきます。

アトオシ デザイン事例掲載サイト

本日のアトオシ デザインの仕事をしている人が、日常をくだらなさで魅せるブログのようなページ。

取材を終えて ロゴストックから

今回は、永井さんの仕事場におじゃまして、インタビューをさせていただきました。

すっきりと整理された空間で、本棚にはロゴデザインに関する本が多数(ロゴデザインの見本帳も!)。そして、書体字辞典や白川静の字統、字通まで。
言葉、文字とその形、成り立ちをしっかりと理解したうえで、デザイナーとしてのアプローチをされているのだということを感じました。

一方で、いい塩梅のいい加減を目指すと語るように、日常生活にしっかりと根ざす、溶け込むことも重要と語る永井さん。人と人のつながりは、日常の中にこそある。デザイナー自身もその中にいなくてはいけない。そんな姿勢を感じました。

あなたのお話、聞かせてください!

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